今や犬よりも猫の飼育頭数の方が多くなりました。トリミング業界にとって猫向けのサービスを見直すべきタイミングともいえるでしょう。これまでに猫のトリミングをしたことがない方、猫はあまり好きではない方、猫のカットが苦手な方などなど、意外とトリマーの中にはこのような方が多いのが実情です。
りん
目次
猫もシャンプーが必要?体臭も抜け毛も少ない?
猫は犬と違って体臭や抜け毛が少ない!だからこそ今の猫ブームがある!と考えていませんか?実はこれは誤りです。猫も犬と同じように日々抜け毛があり、特有の体臭もあります。体臭は加齢とともに強くなるという声もあります。
犬より抜け毛や体臭が少ない理由は?
では犬と異なるように感じるのはなぜでしょうか?それは猫自身が毛づくろいをすることで自身の抜け毛を舌で巻き取り、飲みこんでいるからです。この毛づくろいのおかげで体臭も軽減されています。
またチンチラなどの長毛種の猫は飲みこむ抜け毛の量が多く、体調不良はもちろんフェルト状の毛玉が出来ることも珍しくありません。猫との生活では犬同様に定期的なブラッシングが必要だということを意識し、飼い主さんへもお伝えしていきましょう。
猫は水が苦手?
猫は本来、水を嫌う習性があります。シャンプーが苦手で過度に興奮してしまうことも珍しくありません。ただ抜け毛対策にとシャンプーを希望されるお客様は増えています。
りん
猫カットでは無理をしないさせない!
犬と同様に長毛種の猫も被毛をカットすることができます。カットする際は1mmのバリカンの替え刃を使う方法が一般的です。ただ犬と猫とではカットにおける注意点が大きく異なるので、くれぐれも無理をしないよう、細心の注意を払いましょう。
- カット前に猫の体調を飼い主さんに念入りに確認する
- 猫が過度に嫌がる、暴れる場合、作業を中断する旨の了承を飼い主さんから得ておく
- サマーカットを行った場合、被毛が本来の長さまで生え揃わない可能性があることを説明し、飼い主さんの了承を得ておく
- カットは必ず2人以上で行い、保定をしっかりと行う
- カット中は必ずリードをつけ、猫の脱走を予防する
- 噛みつき、威嚇がある場合はあらかじめ口輪をつけておく
- わずかな傷でも皮膚を傷つけた場合は、飼い主さんに報告し、適切な治療を受ける
- カット後にストレスや疲労から体調を崩す場合があるので、飼い主さんへその旨を伝えておく
猫のトリミングを行う際はトリマー自身も怪我には十分な注意が必要です。猫の爪や歯は先端が細く尖っています。
猫と犬の皮膚はまるで別物
実は猫と犬の皮膚はまるで別物です。もし目の前に犬と猫がいれば、ぜひ比べてみましょう。
猫は柔軟性のある体と伸縮性のある皮膚で、保定を行っていても難なく抜け出したり、姿勢を変えることがあります。バリカンがスムーズに進むようにと皮膚を軽くひっぱったつもりがまるで手ごたえがなく、どこまでが際限?と感じるほどです。
毛玉がある場合はなおさらでしょう。毛玉と皮膚の隙間を見つけようにも、皮膚が柔らかく伸びてしまうので、なかなか安全と思えるポイントが見つかりません。
猫の皮膚はふくらんだゴム風船
こんな猫の皮膚を膨らませたゴム風船と例えることがあります。実は猫特有の皮膚の伸縮性は決して余計なたるみがあるわけではありません。ゴム風船状ですから、ピンと張り詰めています。そのため皮膚表面にわずかでも切れ目や裂け目が出来てしまうと、その伸縮性が原因で瞬時に傷口が広がり、想像以上の大きなダメージへつながります。風船がしぼんでしまう原理と同じです。
このような猫の皮膚の特性から、使用する替え刃は1mmが好ましいとされています。刃先が小さいことで、皮膚を巻き込んでしまう危険性が低くなり、安全に作業が出来るからです。
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もちろん1mm替え刃でカットを行うのですから、仕上がりはサマーカット状、スムース状に短くなります。初めてカットをされるお客様には、あらかじめ仕上がり後の画像を提示し、納得いただくことが大切です。
毛玉の放置が猫にもたらす深刻なダメージ
チンチラ、ノルウェージャンフォレストキャット、マンチカンなど長毛種の猫は希少性が高く、見た目の愛らしさから同種の短毛猫に比べ人気です。
実は猫の被毛はまるで絹糸ともいわれるほどに柔らかく、繊細です。気が付けば脇・腹・内股・尾に毛玉が出来ていることも。
一旦できてしまった毛玉をスリッカーブラシでほどくのは至難の業です。フェルトをもとの糸に戻すことが出来ないのですから仕方がありません。猫自身もブラッシングのために抑制されることを嫌がります。
大切に飼われている猫でも、腹部は一枚のフェルト状の大きな毛玉で覆われていたという事も珍しくありません。猫の毛玉を放置してしまうことで起こるダメージは下記が挙げられます。
- 皮膚のかゆみ
- 脱毛
- 湿疹
- 悪臭
- ただれ、炎症
フェルト状の毛玉で皮膚が覆われていると、皮膚、被毛の通気性が悪化します。気が付けば湿気がこもり、皮膚はジメジメとした状態になるでしょう。また猫自身も毛玉による不快感や皮膚が攣(つ)れる感覚から毛づくろいで毛玉を取り除こうとします。猫のヤスリのようなざらついた舌で皮膚を撫でるのですから、過度に皮膚を傷つけてしまうことや出血や皮膚のただれにつながります。
一旦できてしまった猫の毛玉はほどかずにカットすることをおすすめしましょう。
今後、繰り返しのカットを避けたい場合は使い勝手の良いブラシを飼い主さんにおすすめし、自宅でのお手入れ方法をお伝えしましょう。
猫のトリミング料金は高い?
猫のトリミング料金の相場はシャンプー5000円〜、カット15000円〜程度です。犬と比べると猫はサイズも小さく、毛量も少ないのに猫のトリミング料金は高い!と飼い主さんからたびたび指摘を受けることがあります。
多くの飼い主さんは猫トリミングの料金が高すぎるという印象を抱いているのです。
りん
- 猫は被毛の密度が犬よりも高く、短毛種であってもドライヤーの所要時間が長く必要
- 猫のカットを行う場合、トリマーが複数名で従事すること
- 猫のトリミングが可能なトリマーの数が少なく、特別なサービスであること
今後もますます猫の飼育頭数は増加すると見込まれています。これまでのようにトリミングは犬専用のサービスと思わず、積極的に猫へのサービスも検討していきましょう。