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【トリマー必須】ペットのワクチン接種に関する基礎知識

「一年以内のワクチン接種が利用条件です」こんな一文をペットサロン、ペットホテル、トリミングサロンの利用規約で目にしたことがあるでしょう。

お客様から様々な意見が挙がったり、店舗によってはワクチンに関してさほど厳密な管理を求めないケースもあります。トリマーの立場からも意見は分かれがちですが、基礎知識を身に着けておくことで様々な場面に対応できるでしょう。

ワクチンは任意だけど狂犬病は法的な義務

ペットの混合ワクチン接種はあくまでも飼い主の任意です。つまり接種するかどうかは飼い主自身が判断することです。混合ワクチンはパルボやジステンパーといった伝染性の高い病気の予防のための処置です。生後間もない子犬は半年ほどの期間内に3回の接種が推奨されています。

その後は年に一回の追加接種が推奨されています。しかし成犬は自身の免疫力も安定し、伝染性疾患を発症するリスクも減り、中には混合ワクチンの接種を不要と考える飼い主も少なくありません。

トリミングサロンやペットホテル、ドッグランが利用規約の一環として接種済証の提示を求めるのは、あくまでも独自のルールであり法的な義務ではありません。しかし、不特定多数の犬猫が集まる施設ですから万全を期すに越したことはありません。

一方の狂犬病予防注射は年に1回接種することが法律で定められています。日本では数十年以上狂犬病発症者は出ていませんが、狂犬病が多発していた当時に定められた法律が今も順守されています。この点は様々な意見もありますが、海外ではまだまだ多数の発症があることや、国内でももしもの時の備えと考え、義務はきちんと果たしましょう。

POINT
狂犬病の予防注射は動物病院や自治体の集団接種会場で済ませることが出来ます。費用は3000円前後です。

混合ワクチンとワクチンの意味の違いは何?

混合ワクチンとワクチンは別物ですか?という質問を受けることがあります。これは意味自体に大きな違いはありません。

ワクチンとは病気を予防するための薬剤の総称です。混合ワクチンと呼ぶ場合、複数種のワクチンを混ぜ合わせ、1本の注射として接種しているという意味です。

例えば8種混合ワクチンと言えば、8種類の薬剤を混ぜ合わせた注射という意味です。犬に注射させるときに8回注射を打つのか、1回で終えるのかという違いです。

りん

混合ワクチンには2種~9種まで様々な種類があります。生後間もない子犬の場合、あらゆる病気への危険を想定し8種の接種が推奨されています。

成犬の場合は発症事例の多い病気に限定し2種、3種を接種するケースもあります。費用は薬剤の種類が増えれば増えるほど高額になり、8種の混合ワクチンで10000円前後です。

ペットのワクチンについてはお客様から質問が出ることもあるので、事前に先輩や上司に確認を済ませておきましょう。利用規約に何種以上の混合ワクチンと明記されているのか?ワクチンであれば1種でも問題ないのか?明確な答えを把握していればスムーズに対応することが出来るでしょう。

ワクチン接種以前以後のペット施設利用の注意点

混合ワクチンや狂犬病の予防注射はペットホテルやトリミングショップ利用日の2週間ほど前に済ませておくことが目安とされています。

利用にあたり直前や前日に接種をした場合、急な体調不良が起こるこおとがあります。ごくまれに薬剤にアレルギー反応を起こすペットもいます。

特にペットホテルの場合、滞在中の体調不良は大変危険です。あらかじめお客様に説明をして、利用条件であること、2週間前を目安に接種を完了させて欲しい旨を伝えておきましょう。

POINT
中にはアレルギー反応や高齢、体調、治療中の薬との兼ね合いから混合ワクチンの接種を見送るべきと獣医師が判断をするケースもあります。このような場合、お客様からは臨機応変な対応を求められるでしょう。あくまでも利用条件であることを説明し、獣医師からの連絡や書面があるとスムーズに対応できる旨を伝えましょう。

1年ごとの追加接種には賛否両論も

日本では混合ワクチンの接種は一年に一回が推奨されています。定期的に追加接種を行うことで、薬剤の効果が途切れることなく持続できるようにという考えからです。

しかし海外では追加接種に数年ものブランクがあることも珍しくありません。3年、5年、中には生涯1度という説もあるほどです。ネットやSNSを通じて、飼い主も様々な情報を得ています。中には海外の事例を挙げ一年ごとの接種が不要では?という質問を受けることもあります。

このようなケースはなかなかトリマーの接客応対の範囲では対応できず、答えに困りはててしまうものです。

りん

ただあくまでも「当店の利用規約であること」はお伝えしましょう。トリミングショップの中には海外同等の対応や独自のルール、判断で対応が可能な店舗も多々あります。任意の予防注射だからこそ、それぞれの意見やルールが異なる旨を伝えることで、飼い主自身へ判断を任せましょう。

決してクレームや問い合わせ、強気な言動だからと個別のルールや対応を行ってはいけません。わずか1件の特別対応のつもりが、気が付けば情報が拡散されてしまうこともあります。他のお客様から次々と同じ対応を求められることもあります。

利用規約というルールを定めた以上、すべてのお客様に当てはめ実行すべき重要な意味がある事を理解しておきましょう。

施設利用中の排泄物の処理は念入りに

パルボウイルスやジステンパーといった伝染性も致死率も高い病気は成犬での発症は少なく、身近に感じることはないでしょう。しかし中には病原菌は保有しているものの発症していないだけ、若く健康がゆえに軽度で済んでいるだけということもあります。ウイルスや病原菌は目に見えないものだからこそ念入りな対策が欠かせません。

もちろん犬猫の病気は必ずしもワクチンで予防できるものばかりではありません。

  • くしゃみ
  • 糞便
  • 抜け毛
  • 血液
  • 唾液

一見ごく当たり前、日々の仕事では気にもとめないことが原因で病気が蔓延、感染することもあります。

店舗利用中の糞便やペットホテル散歩中の糞便は必ず袋を密封した状態で処分しましょう。乾燥し粉末化することでウイルスが周囲へ飛散することもあり得ます。くれぐれも注意しましょう。

また滞在中、利用中の異変や体調不良はすぐに飼い主に連絡をし、状況に応じて作業の中断も必要です。

ワクチン接種証明書は丁寧に扱おう

混合ワクチンを動物病院で接種した場合、接種済証明証という書面が発行されます。トリミングサロンやペットホテル様々な場面で飼い主に提示が求められる大切な書類です。

実はこの書類には接種したワクチンごとのシリアルナンバーやシリアルナンバー入りステッカーが添付されています。そのためもし紛失してしまった場合も同一のステッカー入りの書面の再発行はできません。

動物病院に依頼し再発行を行う場合も書面作成にあたり費用が発生します。お客様から預かる際はくれぐれも扱いに注意しましょう。返却忘れも禁物です。

最近ではこのような店舗側のミスを防ぐためにも、接種日時を目視で確認をして書面は預からない、写真撮影をさせてもらい書面は預からないという対処を行う店舗が増えています。

大切な書面であることはきちんと理解し、トラブルにつながらないよう心掛けましょう。

りん

トリマーとして仕事をするうえでカット技術以外にも様々な知識や情報が求められることがあります。苦手意識を持たずに積極的に身に着けることで、お客様から信頼されるトリマーへと成長するでしょう。