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トリマーが知っておくべき取扱注意とされる犬種とは?

大型犬といえば温厚で従順。しつけの覚えも早くて優しい・・・など「良いイメージ」ばかりが浮かびませんか?

しかし、ペットのプロであるトリマーとして仕事をする以上、大型犬には例外があることや条例で飼育方法に制限が設けられている犬種がいることを知っておかなくてはなりません。

条例で飼育に関する取り決めがある犬種とは?

日本では下記の犬種の飼育について自治体が独自の決まりを設けています。

  1. 秋田犬
  2. 土佐犬(土佐闘犬)
  3. ジャーマン・シェパード
  4. 紀州犬
  5. ドーベルマン
  6. グレート・デーン
  7. セント・バーナード
  8. アメリカン・スタッフォードシャー・テリア(アメリカン・ピット・ブル・テリア)

その他、上記以外で「体高60cm以上、かつ体長70cm以上の犬」や「人に危害を加える恐れがあると認め、知事が指定したもの」など、これらの犬種を飼育する場合、犬舎のサイズや構造、素材に至るまで細かな決まりがあります。

それでは何故このような決まりが設けられているのでしょう?

答えは明白です。これらの犬種の飼育には危険を伴うからです。

現状、日本におけるペット販売の仕組みではこれらの犬種をペットショップやブリーダーから簡単に購入することができます。

これまで犬の飼育経験や予備知識がまるでない方でも、家族として迎えることができるのです。

りん

もちろん大型犬の多くは家族に深い愛情を持ち、温厚で多少のことには動じません。小さな子供が大型犬相手に無茶な接し方をしてもおおらかに対応してくれる姿はほっこりした気持ちになりますよね。

しかし、この様子は必ずしも全ての大型犬に当てはまる訳ではありません。

時には自宅の敷地から脱走した大型犬が近隣の方に大ケガをさせたり、ドッグランで小型犬を殺傷してしまう事故も後を絶ちません。

POINT
日本ではこれらのトラブルの多くは裁判にならず、飼い主同士の話し合いで解決が求められます。施設責任者の管理責任を問うこともできず、泣き寝入りになるケースも少なくありません。

ニュースで話題にならないから、周りから話を聞かないからといって、このような事故が全く発生していない訳ではないのです。

優しい?危険?大型犬には二面性がある?

アメリカではアメリカン・スタッフォードシャー・テリア(アメリカン・ピット・ブル・テリア)を危険犬種として条例で飼育禁止とする地域もあれば、別の地域ではセラピードッグとして小児病棟で活躍していることも。

しかし一方で、小さな子供が街中や公園、自宅の庭で命を失う事故も後を絶たないのです。

大型犬の突然の豹変、その時適切に対処できない飼い主の問題は世界中で起きています。

トリミングサロン、ペットホテル、動物病院に来店することも

上記注意すべき犬種達も他犬種と同様にトリミングサロン・ペットホテル・動物病院はもちろんのこと、ドッグカフェやドッグラン、ペットと泊まれる宿を利用します。

多くのペット関連サービス、施設では受け入れることのできないケース例や利用条件は明白にしているものの、特定の犬種を限定した制限は設けていない場合が多いでしょう。

ですので、飼い主様から

  • うちの子はおとなしいです
  • 訓練所に通っていました
  • 訓練士に訓練を依頼した
  • これまでに噛みついたこともない
  • 体のどこを触っても大丈夫

などと説明されると、トリマーの立場上ついそのまま受け止めてしまうことも。しかし、これら「日常の様子」「性格」はあくまでも「家族といるときの様子」であることを忘れないでください。

注意
危険とされる犬達の多くは、従順で愛情深い犬ばかりです。家族のためなら無条件で自分の命さえ惜しみません。ただ、この行為は家族のためであって、家族以外の人間や他犬にも同様という訳ではないのです。

例えば、下記のように不意の出来事がきっかけで犬は普段とまるで違った様子を見せることがあります。

  1. トリマーや獣医師、動物看護士の些細な行為
  2. 他犬の鳴き声
  3. 発情期の犬猫の匂い
  4. 屋外からの交通騒音(救急車やパトカーのサイレンなど)
  5. 地震や雷
  6. 小さな子供のはしゃぐ声
  7. 通りすがりにトリミングサロンのガラス窓を叩く人

上記のような場面では、たとえベテランのトリマーや看護師であっても対処は難しいでしょう。

しつけのプロであるトレーナーや訓練士でさえ、犬の突発的な衝動を抑えるというのは簡単な事ではありません。

りん

トリミングという仕事は、常に緊張感を持って油断をしないこと、条例で制限されるということはどんな意味を持っているのかを正しく理解しておきましょう。

特定の犬種をペット同伴避難の対象外とする地域も

今や大規模災害時にペット同伴避難や避難所でのペット受け入れは全国で進んでいます。

しかし一部の地域では、特定の犬種の同伴避難は対象外と条例で定めています。これは災害という非日常の環境で、犬は平静を失い、周囲に危険を及ぼす可能性があるためです。

MEMO
ペットのプロからは様々な意見も挙がっていますが、災害という状況下では個々の犬の性格やしつけの程度を見極めることは難しいことが実情です。

日本におけるペットを取り巻く環境は、欧米と比べて遅れていることが指摘されますが、日本では日本のルールを受け入れて遵守するべきです。ルールというのは犬を飼っている自分だけではなく、日本国民全てを守るために設けられていることを忘れずに。

りん

ペットのプロとして仕事をする以上、様々な状況や場所・環境における犬に関するルールについてもぜひ調べてみてくださいね。

特定犬種を受け入れる際は十分な安全策を講じてから

特定犬種はもちろんのこと、危険と感じる犬や初めての犬、噛み癖や凶暴性を持つ犬、またその可能性が考えられる犬をトリミングサロンやペットホテルで受け入れる時は下記の事項に留意しておきましょう。

  1. 事前にスタッフ全員で来店、利用予定日を把握しておく
  2. 同時間帯に利用する犬猫の情報を把握し、場合によっては利用時間を調整する
  3. 飼い主様に店内で待機してもらう
  4. ペットホテルで預かる場合は突然の脱走に注意する
  5. トリマーの怪我や物品破損への補償に関して作業開始前に書面で取り交わしをする

上記のように、自治体で飼育への危険性が発表されている犬種をトリミングサロンで受け入れる以上は、様々な対策が必要です。

自治体の定めたルールをプロであるトリマーが「知らなかった」では済まないこともあります。周囲への安全を第一に考え、場合によっては利用を断るという決断も必要です。

「ペットに関する条例」を調べておこう

この記事を最後まで読んでくれたあなたはぜひ、自身の勤務地や今後独立開業を考えている地域の「ペットに関する条例」について調べてみましょう。

  • どんな犬種が特定犬種に指定されているのか?
  • どんな飼育方法が定められているのか?
  • 何かあったときの問い合わせ先はどこか?

などなど、条例は各自治体が独自で定めているので地域によって内容が異なります。必ず自治体公式HPで確認をしましょう。

りん

日ごろの接客でこの内容について話題に上がることはほぼ無いと思いますが、プロとして「法律」「条例」はきちんと知っておいてくださいね。

またこれらの内容は更新されることがあるので、都度確認をして最新情報を把握しておくと尚良しです。