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寒い季節のサマーカットはアリ?ナシ?

トリマーをやっていると、お出かけには厚手のコートが欠かせない寒い時期でもサマーカットのオーダーを受けることがあります。

サマーカットといえば暑さ対策の為のカットスタイルですので、真冬に依頼されるとトリマーとして少し複雑な気持ちになることも。

りん

今回は寒い時期のサマーカットについて考えてみました🎵

暑さ対策のサマーカットは見直される傾向に?

春から夏にかけて、カット犬種は一斉にサマーカットのオーダーが続きますが、実は近年サマーカットを施すことに様々な指摘が増え、トリマーや動物病院、専門家の間でサマーカットを見直すような意見が挙がっています。

その理由は・・・

  1. 被毛が短くなることで、皮膚に紫外線が直接当たり、かえって体感温度が上昇するから
  2. バリカンで皮膚がダメージを受けるから
  3. 繰り返しカットをすることで被毛の質感が悪化するから
  4. 皮膚トラブルが悪化するから
  5. 体を掻いた時、爪が直接皮膚に触れることで皮膚表面に傷がつくから

などなど・・・さらにはサマーカットをしても犬の体感温度の変化はマイナス1〜2度とごくわずかなことも、サマーカットを見直すべきという風潮を後押ししています。

にもかかわらずサマーカットのオーダーが続く理由は・・・何と言っても被毛が短いことで毎日のお手入れが簡単という利点があるからです。

先輩トリマー

毛玉やもつれを飼い主さん自身がブラッシングで解消するのは簡単なことではありません。この点においてはサマーカットをすることで飼い主さんの負担が軽減し、毛玉やもつれによる犬の皮膚への弊害も回避することができます。

真冬のサマーカットは洋服による毛玉予防にもなる

寒い季節は犬用アパレル商品にも続々と新デザインが登場し、ペットショップの店頭も一年で一番華やかになります。ニット素材やボトムス付きデザインなど寒い季節だからこそ楽しめるファッションに飼い主さんもテンションが上がり、思い思いのオシャレを楽しむことができます。

しかし、ペットの被毛のことを考えてみると、ニット素材は静電気が起こりやすく、ボトムス付きデザインは後肢や内股に摩擦が起き毛玉ができやすくなります。

洋服はあくまでもファッションの一部であり、本来の被毛の様に体そのものを寒さから守ってくれるわけではありません。

先輩トリマー

注意
特にダブルコートの犬種の場合、サマーカットを施すことで保温効果の高いアンダーコートも無くなってしまうので、ペットの皮膚に直接寒い空気が行き届いてしまいます。

寒い季節にサマーカットのオーダーを受けた時は、カットを施す前に下記の事項を丁寧に説明しましょう。

  1. 犬の被毛は季節に応じて生え変わり、冬には冬の寒さに耐えうる毛質に変わっていること
  2. 犬の被毛が2層構造になっていること
  3. アンダーコートは寒い空気が皮膚に届かないよう保護する役目があること
  4. アンダーコートがあることで体温が外部に放出されにくくなること

サービス業であるからこそ、飼い主さんからの注文を無暗に断るわけにはいかない、断ることで飼い主さんを不快にさせてしまうのではないかと不安を抱いてしまう方もいると思います。

りん

でも、トリマーはペットの被毛のお手入れのプロだからこそ、飼い主さんには正しい情報を提供し、ペットがより快適で健康的な生活を送ることができるようサポートをする役割も担っています❗️

飼い主さんとトリマーとの間には経験や知識量の大きな差があります。飼い主さんがペットの被毛の構造に詳しくないことも当然です。接客をする時は、丁寧な言葉遣いで相手の希望を理解しながら説明をしましょう。

「エアコンがあるから寒くない」は間違い!

寒い季節はエアコンにファンヒーター、床暖房、こたつと室内で快適に過ごすためのアイテムがフル稼働します。

このような快適な室内で暮らしているからこそ、ペットも暖かく過ごしているだろうと勘違いしている飼い主さんも少なくありません。

しかし、家電で暖められた室内が必ずしもペットにとって快適で、適度な室温とも限らないのです。

注意
エアコンやファンヒーターで暖められた空気は、天井付近に滞留してしまい、ペットが暮らす足元付近は驚くほどに低温になっています。特に家族の留守中や夜間就寝中は、空気の流れが滞り、床付近に冷たい空気が留まることでペットが辛い寒さを感じてしまいます。

この状態でペットをサマーカットにしてしまうと、被毛で守られるべき体は寒い空気にさらされ、ペットが体調を崩す原因にもなりえます。

家電を使い人工的に空気を温めたり、静電気が起こりやすい素材の洋服を着せて寒さをしのぐよりも、冬には冬用の被毛でペット本来の身体機能を活用する方が各段に適切です。

先輩トリマー

年間を通じてサマーカットをオススメする場合もある?

賛否両論があるサマーカットですが、ペットの状態によっては年間を通じてオススメする場合もあります。

例えば

  1. 皮膚トラブルで治療をしている
  2. 毛玉ができやすい毛質なうえに、家族がお手入れをすることが難しい
  3. シニアだからトリミングやドライヤーの時間を出来る限り短縮したい

上記のような特別な理由がある場合、効率を最優先に考え、余分な被毛をカットすることも必要です。

被毛が短いことで治療のための薬剤が皮膚へしっかりと行き届き、診察の際も皮膚の状態を把握しやすくなります。

また、シニア犬やお手入れが苦手な犬の場合、余分な被毛が無いことで毛玉やもつれの問題を解消でき、シャンプーやドライヤーも最低限の時間で済ませることができます。このことは飼い主さんだけでなく、ペットにとっても大きなメリットになります。

もちろんこのような理由から季節に関係なくサマーカットを施す場合は、飼い主さんや獣医師とも十分に相談をしたうえで、下記の方法も併せて提案してみることを検討してください。

  • 洋服を着せて寒さ対策をしっかりと行う(静電気対策必須❗️)
  • 爪はいつも短く切り、皮膚にひっかき傷ができないよう注意する
  • 乾燥肌になることがあるので、保湿を定期的に行う

トリマーとしての意見はしっかりと伝えることも大事

トリマーという仕事に慣れてくると、つい基本的なことに鈍感になってしまうことがあります。

飼い主さんからサマーカットのオーダーを受けた時は、疑問意識を持ち、

・なぜこの季節に?

・本当に短いカットが必要?

・別のスタイルの方がいいのでは?

とぜひ一度考えてみてください。

りん

トリマーというペットのプロとして、意見を述べるべきところではしっかり飼い主さんに説明を行いましょう。